見出し画像

黒色をキレイに印刷するデータのつくり方

印刷物はCMYK(シアン・マゼンダ・イエロー・ブラック)という4色のカラーで表現されています。基本的に黒はKで作りますが、CMYを使ったり、Kと組み合わせることで黒の色味が変わることをご存知ですか?
今回は黒を表現する3つの方法について解説します。
また、注意点も合わせて解説しているので、ぜひ参考にしてください。


黒色の濃度が100%の「スミベタ」

スミベタとは、データ上で黒(K)1色を濃度100%にした設定のことです。印刷でよく聞く「スミベタ」の「スミ」は"墨"のことで、黒(K)のことです。「ベタ」は"ベタ塗り"からきており、濃度マックスで塗ることを指します。

スミベタの構造の説明

スミベタの注意点①:下の絵柄が透ける
スミベタ(K100%)は多くの場合「オーバープリント」の状態で印刷されるため、下記の画像のように下に重なっている色が透けてしまいます。オーバープリントとは、”色と色を重ねて印刷する”効果があります。これにより、黒と他の色が重なり濃く見えることで透けて見えます。
黒を透けさせないための対処法は下記の”4色使わずに透けさせない方法”でご紹介します。

オーバープリントの図解

今回はスミベタのオーバープリントについてご紹介しましたが、他のデータではどうなるのか詳しく知りたい方は「オーバープリントについて」をご覧ください。

スミベタの注意点②:白抜け(ピンホール)が起きやすい
スミベタは名前の通り黒1色で印刷するため、インクが乗らない箇所が出てくる場合があります。広範囲でスミベタを使用すると発生しやすい傾向があります。今回は黒でご紹介しましたが、白抜け自体はどの色でも"1色のベタを広範囲"で刷る場合は発生しやすいのでご注意ください。

ピンホールの実例画像


CMYKが全て100%の「4色ベタ」

4色ベタは名前の通りCMYK全てが100%で設定されている状態の「黒」を指します。

4色ベタの構造

4色ベタの注意点:裏移りや乾燥不良などのリスクがある
4色ベタは、大量のインクを使用して黒を表現することになります。
その結果、濃度が高いことでインキの乾きが悪くなり、乾いてないインクが重なっている紙の裏に付着して裏写りが起きてしまいます。
また、広範囲に使われている場合、重ねた時に印刷物同士がくっつき、はがそうとすると印刷面も一緒にはがれて傷がついてしまう「ブロッキング」も起こりやすくなります。
上記のリスクを考え、4色ベタは推奨していない印刷会社も多いのでデータ制作時にはご注意ください。


濃くて深みのある黒「リッチブラック」

リッチブラックは、CMYK全ての色を使用し黒を表現します。そのため名前の通り、より濃く深みのある黒になります。

リッチブラックの注意点①:CMYKの濃度配分
データ上で全ての色の合計値が300%以上になると、印刷時にインクが乗りすぎて乾きづらかったり、くっついたり…というトラブルが発生します。
リッチブラックのデータを作成する際、印刷会社や商品によって推奨している濃度は違います。データ制作時は依頼先の情報をよくご確認ください。

リッチブラックの構造

より詳しく知りたい方は「リッチブラックについて」をご覧ください。

リッチブラックの注意点②:版ズレが起きやすい
2色以上使われていると、データ上では同じ位置でも、印刷の時に若干位置がずれてしまう版ズレが起きやすくなります。

版ズレの説明

おすすめの使用例

スミベタとリッチブラックはデザインに合わせて使い分けが必要となります。

スミベタは小さい文字や線!
小さい文字や線はスミベタのオーバープリントを活用することで、版ズレを防ぐことができ、見やすく読みやすい仕上がりになります。

よく使われる場面
・白黒印刷
・テキストメインの文書
・線画イラスト

リッチブラックは写真集やパンフレットに!
4色使用するためスミベタのように下の絵柄が透けることがなく、白抜けも起きづらくなります。
ただ、版ズレが起きやすいため、小さい文字や細い線がないかチェック!!

よく使われる場面
・写真集やパンフレット
・ロゴやイラスト
・高級感のある印刷物


4色使わずに黒を透けさせない方法

黒色のオブジェクトから下の絵柄が透けてしまう場合は、黒に別の色を1色混ぜることで解決します。
黒の絵柄が透けてしまうのは「スミベタ」で作られている時だけです。ですので、違う色を1%でも混ぜてスミベタではない状態にしてしまえば、オーバープリントで印刷されなくなるため透けません。

オーバープリントの解決方法の説明

この時、混ぜる色や濃度(%)に決まりはありませんが、迷った場合は背景の絵柄に使われている色で、1%だけ入れるのがおすすめです。
入れる色で迷った時は下記の順で選んでみてください。

①背景の絵柄に使われている色
②その中でも範囲の多い色
③それでも迷ったら”イエロー→マゼンタ→シアン”の順で1色入れてみる

黒の見え方を比較してみよう!

黒の構成パターンの説明

スミベタ(K100%):下にある◼︎の絵柄が透けています。
K100%+1%:黒に背景色を1色プラスした場合は見た目を変えることなく透ける現象が防げます。
リッチブラック:黒が濃くなったことで◼︎のオブジェクトがハッキリ見えます。ただし、版ズレが起きる可能性があるのでご注意ください。


いかがでしたでしょうか?
簡単そうに見える黒色のデータ制作ですが、どのようなデザインを印刷するかによって制作方法が変わります。データの作り方について不安になった場合は、依頼先の印刷会社へ相談してみるのが良いかと思います。
印刷通販デジタでは、IllustratorやPhotoshopを使ったデータ制作のテクニカルガイドをご用意しています。
今後もみなさんの創作活動に役立つ情報を発信していきますので、参考にしてみてくださいね。


デジタではさまざまな印刷アイテムをWeb上から注文できます。