マチエール(絵肌)と印刷表現
印刷の面白さを、美大卒のわたし視点で探ってみました。
私が油絵を描くうえで意識しているのはマチエールです。
マチエールとは美術でよく使われる用語で、絵の表面にできる厚みや質感などの絵肌のことです。
油絵で窓ガラスを描くときにペインティングナイフを使用してツルツルした表面にしたり、雲を描くときは絵の中でも浮いてるみたいに絵の具を盛ってみたり。マチエールの表現はさまざまです。
個性の一つでもあり、作家のこだわりもあるマチエールが印刷でも表現されていたら嬉しいですよね。
そこで今回は、マチエールがデジタの印刷でどこまで表現されるのか検証していきます!
クリアファイルとタオルで検証してみた
ミュージアムショップのグッズで目にすることが多い、タオルとクリアファイルに印刷しました。全体の絵柄はこちらです。
遠目に見ても違いが分かりませんでした。
次にマチエールのポイントごとに見ていきましょう!
1.絵の具の混ざり
青と白の混ざりきっていない絶妙な色の表現、水分が多いのか絵の具が下に垂れています。触ったら絵の具が混ざりそうな、そんな瑞々しさも感じます。
タオルに印刷しても、混ざりきっていない色が表現されています。
クリアファイルでも同様に、混ざりきっていない絶妙な色味が印刷される結果となりました。
2.半透明の色合い
赤色を置いて、上から白色を重ねています。白色の絵の具に水分が多く含まれているのか、半透明の色合いとなっています。
タオルへの印刷でも白色の下の層にある赤色が見えます。しかしタオル生地に印刷することで、アクリル版などのツヤツヤした表面にマット加工をしたような質感は損なわれました。
クリアファイルでは半透明の色味はもちろん、マットな質感までしっかりと印刷されています。
3.絵の具のかすれ具合
次に絵の具のかすれている表現について見ていきましょう。これは水分がほとんど含まれていない赤色絵の具を筆にのせ、水色の上から重ねています。強く擦るように描くとキャンバス地のボコボコが表面に出てきます。
タオルに印刷すると色が黒くはっきり出てしまいますが、キャンバス地のボコボコは感じられます。
クリアファイルでも、かすれてボコボコの表面が印刷されています。
4.絵の具の厚さ
入稿データの青色だけ見ると、薄く塗っているところ、厚く塗っているところがあります。
しかしタオルでは、陰影部分がうまく印刷で表現されず、絵の具の厚さがフラットに見えます。
一方、クリアファイル印刷ではかすかな陰影もしっかり印刷され、厚さの違いが分かります。
まとめ
ミュージアムショップのグッズで目にすることの多いタオルとクリアファイルで検証してみました。
タオルに印刷すると、絵の具の厚さの表現が弱く、質感もタオル生地本来の柔らかい質感になりました。一方で、絵の具の混ざりきっていない色、半透明などの色の表現には優れていました。
クリアファイルへの印刷では、絵の具の厚み・質感・色がしっかりと表現されていました。ミュージアムショップのグッズの定番になる理由がよく分かります。
人によって好きな絵画が違うように、タオルへの印刷が好きな人も、クリアファイルへの印刷が好きな人もいます。
絵画の表現が自由なように、何に印刷するかも自由です。
表現方法や用途に合わせて絵画を印刷してみませんか?